医療問題(YouTube)

麻疹(はしか)

■ 定義

麻疹(はしか)は
感染症法に基づく4類感染症定点把握疾患で、
(全国約3,000カ所の小児科定点より毎週把握)
麻疹ウイルス measles virus の感染により引き起こされる.


学校保健法に基づく第二種の伝染病.

登校基準としては,
「発疹に伴う発熱が解熱した後,3日を経過するまで出席停止とする」


感染性は非常に高く,
感受性のある人(免疫抗体を持たない人)が
暴露を受けると90%以上が感染する.

年齢では1歳にピーク,約半数が2歳以下.

わが国の1歳児の麻疹ワクチン接種率は約50%と極めて低い,

患者のほとんどが予防接種未接種.


麻疹による死亡例が毎年報告されている.
現在もなお数十名の死亡例がある.

年齢的には0〜4歳児が大半を占め,
特に0,1歳児の占める割合が多い.


麻疹にかかった人は終生免疫をもつ.



■ 疫学

ヒトからヒトへの空気感染(飛沫核感染)の他に,
飛沫感染,接触感染など様々な感染経路で感染する.

我が国では通常春から夏にかけて流行する.

1984 年に大きな全国流行があり,
1991年にも流行があったがやや小さく,
毎年地域的な流行が反復している.

感染症発生動向調査では,
国内約3,000の小児科定点から年間1〜3万例の報告,
実際にはこの10倍以上の患者が発生していると考えられる.

2歳以下の罹患が約50%,
罹患者の95%以上が予防接種未接種.

発症予防には麻疹ワクチンが有効.

国内での麻疹ワクチン接種率は低く,1歳児の接種率は約50%.



■ 病原体

麻疹ウイルス measles virus は,
パラミクソウイルス科 Paramyxoviridae の中の
パラミクソウイルス亜科 Paramyxovirinae の
モルビリウイルス属 Morbillivirus に分類されるウイルスである.

直径100〜250nmのエンベロープを有する一本鎖RNA ウイルス.


感染後はリンパ節,脾臓,胸腺など全身のリンパ組織を中心に増殖する.


エンベロープ蛋白のうち,
F蛋白とH蛋白がその病原性に大きくかかわっている.

F(fusion)蛋白は
ウイルスと宿主細胞の膜融合を引き起こし,
宿主細胞へのウイルスの侵入を可能にする.

1980 年代の流行から始まった
H(hemagglutinin) 遺伝子の変異は,
1990 年代になってF遺伝子に及んでいる.

H蛋白,F蛋白は感染防御抗体を作らせる蛋白なので,
これらの部位での変異を注視する必要がある.


熱,紫外線,酸(pH<5),アルカリ(pH>10),
エーテル,クロロホルムによって速やかに不活化される.

空気中や物体表面では生存時間は短い(2時間以下).



■ 臨床症状

1.前駆期(カタル期)

潜伏期10〜12日.

38 ℃前後の発熱が2〜4日間続き,
倦怠感,不機嫌,上気道炎症状,結膜炎症状が現れ,次第に増強する.

乳幼児では消化器症状として下痢,腹痛を伴うことが多い.

発疹出現の1〜2日前頃に頬粘膜の臼歯対面に,
やや隆起し紅暈に囲まれた約1mm 径の白色小斑点(コプリック斑)が出現する.

コプリック斑は診断的価値があるが,
発疹出現後2日目の終わりまでに急速に消失する.


2.発疹期

カタル期での発熱が1 ℃程度下降した後,半日くらいのうちに
再び高熱(多くは39.5 ℃以上)が出るとともに(2峰性発熱),
特有の発疹が耳後部、頚部、前額部より出現する.

翌日には発疹が顔面,体幹部,上腕におよび,
2日後には四肢末端にまでおよぶ.

発疹が全身に広がるまで,発熱(39.5 ℃以上)が3 〜4日間続く.

発疹ははじめ鮮紅色扁平であるが,
まもなく皮膚面より隆起し,融合して不整形斑状(斑丘疹)となる.

指圧によって退色し,一部には健常皮膚を残す.

発疹は次いで暗赤色となり,出現順序に従って退色する.

発疹期にはカタル症状は一層強くなり,特有の麻疹様顔貌を呈する.


3.回復期

発疹出現後3〜4日間続いた発熱も回復期に入ると解熱し,
全身状態,活力が改善する.

発疹は退色,色素沈着がしばらく残り,僅かの糠様落屑をみる.

カタル症状も次第に軽快.

合併症のないかぎり7〜10 日後には回復する.


患者の気道からのウイルス分離は,
前駆期(カタル期)の発熱時に始まり,
第5〜6発疹日以後(発疹の色素沈着以後)は検出されない.



■ 合併症

1.肺炎

麻疹の二大死因は肺炎と脳炎.

・ウイルス性肺炎
病初期,胸部X 線上,両肺野の過膨張,瀰漫性の浸潤影.
片側性の大葉性肺炎の像を呈する場合もある.

・細菌性肺炎  
発疹期を過ぎても解熱しない場合に考慮.
原因菌としては,
肺炎球菌、インフルエンザ菌、化膿レンサ球菌、黄色ブドウ球菌など.

・巨細胞性肺炎
成人の一部,あるいは特に細胞性免疫不全状態時にみられる肺炎.
肺で麻疹ウイルスが持続感染した結果生じるもの.
予後不良であり,死亡例も多い.
発疹は出現しないことが多い.
麻疹抗体は産生されず,長期間にわたってウイルスが排泄.
胸部レントゲン像では,肺門部から末梢へ広がる線状陰影.


2.中耳炎
麻疹患者の約5 〜15%にみられる最も多い合併症の一つ.
細菌の二次感染により生じる.

乳幼児では症状を訴えず,中耳からの膿性耳漏で発見される.


3.クループ症候群

喉頭炎および喉頭気管支炎は合併症として多い.
麻疹ウイルスによる炎症と細菌の二次感染による.


4.心筋炎

心筋炎,心外膜炎をときに合併する.

麻疹の経過中半数以上に,一過性の非特異的な心電図異常.
重大な結果になることは稀.


5.中枢神経系合併症

1,000 例に0.5〜1例の割合で脳炎を合併.

発疹出現後2〜6日頃に発症することが多い.

麻疹の重症度と脳炎発症には相関はない.

患者の約60%は完全に回復する.

20〜40%に中枢神経系の後遺症を残し,
(精神発達遅滞,痙攣,行動異常,神経聾,片麻痺,対麻痺)

致死率は約15%である。


6)亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis :SSPE)

麻疹ウイルスに感染後,特に学童期に発症することのある中枢神経疾患.

知能障害,運動障害が徐々に進行し,
ミオクローヌスなどの錐体・錐体外路症状を示す.

発症から平均6〜9 カ月で死の転帰をとる進行性の予後不良疾患.

発生頻度は,
麻疹罹患者10万例に1人,麻疹ワクチン接種者100万人に1人.



■ 病原診断

ウイルス分離,
麻疹特異的IgM 抗体価の測定,
急性期と回復期のペア血清での麻疹IgG 抗体の有意な上昇をもって診断.



■ 治療・予防

特異的治療法はない,
対症療法が中心.

母体由来の麻疹特異IgG抗体があると,
接種した麻疹ワクチンウイルスの増殖が十分でない.

母体由来の抗体がほぼ消失する生後1歳以降の児に接種を行う国が多い.


我が国における現行の予防接種法では,
生後12カ月〜90カ月未満を接種年齢としている.

少なくとも生後12〜15カ月に接種することが望ましい.


1 歳前に接種を受けた場合は,1 歳以降に再接種をする必要がある.


γグロブリンを投与された後は,
6 カ月未満の乳児と同様の理由で効果が得られないため,
3カ月間は接種を行わない.


川崎病などの治療で大量療法を受けた場合には,6カ月間あける必要がある.


弱毒生ワクチンによる免疫獲得率は95%以上.


接種後の反応としては発熱が約20〜30%,発疹は約10%.
ごく稀に(100〜150 万接種に1例程度)脳炎を伴うことが報告されている.
麻疹に罹患したときの脳炎の発症率に比べると遙かに低い.
タグ:麻疹 はしか
posted by drk119 | Comment(1) | TrackBack(1) | 感染症
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