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急性カタル性上気道炎(かぜ症候群)

■定義


 急性カタル性上気道炎(かぜ症候群)は,多種類の病原による上気道のカタル性炎症の総称であり,鼻閉,鼻汁,咽頭発赤,発熱などを主徴とし,主に急性鼻炎や咽頭炎の形を取る急性呼吸器感染症である.多くは全身症状が軽微で予後もよく,2〜5日程度で改善するが,乳幼児や高齢者,重篤基礎疾患保有例では,種々の合併症を併発して予後が不良となる例が時にみられる.年間を通じてみられるが,秋〜冬に流行が多い.誘因として,個体の条件(免疫不全,脱水,疲労,飲酒,喫煙など)や環境の変化(乾燥,寒冷)が重要である.




■病原体


 病原の90%前後をウイルスが占める.ライノウイルスが最も多いが,判明しているだけで113以上もの血清型があり,流行を起こしやすいものは限られている.ライノウイルスは,ピコルナウイルスに属し,単鎖RNAで,鼻あるいは目に侵入し定着する.線毛運動によりアデノイドに移行し,リンパ上皮細胞のICAM−1(CD54)分子を介して感染する.最適の増殖温度は33−35℃なので,上気道での増殖に限られる.潜伏時間は8−12時間ときわめて短く,平均有病期間は1週間である.症状はくしゃみ,鼻汁,鼻閉,咽頭痛,喉のかゆみ,嗄声,咳,頭痛,筋肉痛,倦怠感,熱感,寒気などである.インフルエンザに比べ,全身症状や咳は軽い.また副鼻腔炎の合併頻度が高く,炎症性サイトカイン(IL-1,IL-6,IL-8)の産生も鼻汁で認められる.


 次いでコロナウイルスが多い.エンテロウイルスに含まれるコクサッキーウイルスA,B群やエコーウイルスも多く,次いでアデノウイルスやRSウイルスも多い.ウイルス以外では,肺炎マイコプラズマ,肺炎クラミジア,細菌による.




■頻度
内科領域の日常臨床では最多,冬期間に多い.
80%以上はウイルスによる.ほぼ,ライノウイルス,コロナウイルス,コクサッキーウイルス,エコーウイルス,アデノウイルス,RSウイルス(RSV)の順で多い.マイコプラズマ,クラミジア,細菌も一部関与する.




■病態


 他の患者からの飛沫感染により,ウイルスが上気道の粘膜上皮細胞に付着,侵入,増殖して感染が成立する.上皮細胞は変性・脱落・壊死し,二次感染細菌が付着しやすくなる.

 低温・低湿の条件が揃うと感染が成立しやすいが,エンテロウイルスのように夏かぜを起こすものもある.

 ライノウイルスやコロナウイルスは主に上気道粘膜の線毛を侵し,これが脱落すると,一般細菌が付着しやすく,細菌二次感染が成立しやすくなる.

 アデノウイルス3型は結膜にも急性炎症を起こしやすく,エンテロウイルスはヘルパンギナや手足口病,無菌性髄膜炎,発疹,軽い麻痺症,眼感染,下痢症などを起こしやすい.

 RSウイルスやパラインフルエンザウイルスは下気道を侵しやすく,乳幼児に重症の細気管支炎や肺炎を起こすことがある




■臨床症状


1.普通感冒(common cold)

 臨床症状は,起因ウイルスが異なっても似通っており,鼻炎症状が緩徐に発現,鼻咽頭不快感・乾燥感,くしゃみ,鼻閉,水様鼻汁が分泌される.

 ライノウイルスやコロナウイルスによる感染ではこれらの症状が2〜3日出現するのみで無熱の例が多く,発熱も37℃台にとどまる.しかし,乳幼児や高齢者では重症化する例もあるので,注意を要する.

 夏かぜのエンテロウイルスでは腸管症状がみられたり,臨床症状・所見も多彩なので,他の感染症との鑑別に留意したい.

 アデノウイルスでは鼻炎にとどまらず,咽頭・喉頭炎,ヘルパンギナ,さらに下気道感染に移行したり,結膜炎を起こす例もある.

 RSウイルスやパラインフルエンザウイルスによる感染は,成人ではきわめて軽症であるが,乳幼児の初感染例では下気道感染や肺炎に移行することも多く,注意を要する.

 いずれのウイルスでも,加齢に伴って感染を繰り返すたびに症状・所見は軽度となり,無症候性となることが多い.


2.咽頭炎 

 鼻炎症状や下気道症状よりも咽頭症状が強い型であり,咽頭痛や時に嚥下痛を伴う.咽頭粘膜の腫脹・発赤のほか,咽頭後壁や扁桃に灰白色の滲出物,咽頭後壁リンパ濾胞の腫脹・発赤を認めることがある.全身症状はやや強く,発熱を伴う.アデノウイルスが最も多いが,細菌二次感染例ではレンサ球菌の関与が多い.

下記二つの特殊型がある.

1)ヘルパンギナ:
 高熱で発症し,咽頭粘膜(軟口蓋,特に前口蓋弓)に数個〜十数個の直径1〜2mmで灰白色の粘膜疹(丘疹→水疱→潰瘍と進展する)およびその周囲に紅暈が出現することが特徴である.

2)急性リンパ結節性咽頭炎:
 咽頭所見はヘルパンギナと似るが,粘膜の丘疹は潰瘍にまで進展せずに治癒するのが特徴である.


3.咽頭結膜熱 

 発熱,咽頭炎,結膜炎を3大主徴とし,アデノウイルス3型による例が多い.悪寒,頭痛,発熱で発病,せき,鼻汁もあるが,咽頭痛とともに咽頭粘膜の発赤,扁桃の発赤・腫脹,咽頭後壁リンパ濾胞の発赤・腫脹,頸部リンパ節の腫脹・圧痛などの咽頭炎の所見が強く,眼痛,眼灼熱感,羞明,流涙,眼脂などの濾胞性結膜炎の所見も強い.


4.クループ 
 喉頭病変が強く,発熱とともに嗄声,犬吠様のせきが出現する.重症例では呼吸困難,チアノーゼを呈するが,小児に多く,パラインフルエンザウイルスの例が多い.




■検査所見


血液検査:
 白血球数(WBC)やCRPは上昇しない.WBCはむしろ減少傾向,細菌二次感染例では増加する.


 ウイルスの分離と血清抗体価の有意上昇の確認はかぜ症候群の確定診断に不可欠であるが,ウイルス分離と血清抗体価の確認には最低でも5〜7日を要するので,現時点では臨床的に診断せざるを得ない.結局,診断は,症状・所見を総合した臨床診断によるが,今後は,ウイルス分離や抗原検出を迅速に行う病原診断を行うべきであり,分子生物学的診断の進歩も期待される.


 膿性痰が出現するなどの徴候で二次的細菌感染が疑われるときは,一般細菌の分離培養やさらには薬剤感受性検査を積極的に行う.




■鑑別診断


 鑑別すべき疾患には細菌性扁桃炎,細菌性気管支炎,異型肺炎,細菌性肺炎などがある.細菌感染では膿性痰,白血球数増加などが鑑別の目安となる,異型肺炎はマイコプラズマやクラミジアが関与するので,ウイルス感染と同様に,検査成績があまり動かずに臨床症状や身体所見が強いため,慎重に鑑別する.




■治療の基本方針

 抗ウイルス薬はいまだ不十分なので,対症療法(解熱・鎮痛薬,非ステロイド性抗炎症薬,蛋白分解酵素製剤)が基本である.含嗽薬,鎮咳去痰薬,抗ヒスタミン薬を考慮する.一般療法(安静,保温・保湿,栄養補給,脱水予防,入浴制限)も重要である.


 小児において,溶連菌感染の疑いが強い例は咽頭培養後,10〜14日間、ペニシリン系抗生物質投与を要するする.


 成人で,膿性痰の出現など細菌感染の可能性が強い例は培養を行い,基本的にはβ-ラクタム薬,慢性呼吸器基礎疾患保有例はニューキノロン薬を投与する.


 乳幼児,高齢者,妊婦,慢性呼吸器疾患・心疾患・糖尿病保有例などは細菌二次感染から肺炎を起こして重篤となる例があり,注意が必要である.
posted by drk119 | Comment(1) | TrackBack(1) | 呼吸器疾患
この記事へのコメント
はじめまして。突然のコメントで失礼します。
医師にまつわるリンク集を管理しております
ビジログと申します。
貴サイトを拝見致しまして、
当方のブログ
「医師のお仕事♪」
http://job-doc.busilog.com/
にリンクを設定させていただきました。
今後ともよろしくお願いします。
Posted by ビジログ at 2007年03月19日 23:08
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Tracked: 2008-02-05 13:50
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